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new year's card 2013 by yoshihiro mizuta (yoshihiromizuta)) on 500px.com

毎年、年賀状を書かないでお馴染みのわたし。
なのになぜか、今年はつくることになってしまった。
それがこれである。

何故そんなことになったか。

去年、引っ越しをすることになり、当然、自分の膨大な所有物の整理をしたのだけど、そのとき、過去にいただいた年賀状がぽろっと出てきて、それを手に取ったとき「あ。いいな」とと心が震えてしまったのだ。だから自分も同じことをしたいと思ったのである。

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普段はウェブデザイナとしてホームページを創っているわけだが、「創っている」といっても実際はコンピュータ上でデータ(0と1の集合、あるいは電気信号)を足したり引いたりして、仮想的にこねくり回しているだけに過ぎない、つまり、現実には何も生み出してはいない。極端な話、突如頭の少し上のあたりで「ばちっ」と音がして、世界から電気が消滅してしまったとしたら、わたしの歴史は一瞬のうちにゼロになってしまう。

ゼロはこわい。なにせ「無」なのだから。
何も無いところから、何かを生み出すことは偉業だ。
クリエイターであればいつか誰でも気が付く、その太陽のような偉大さに、わたしの「今まで」が影になって、暗く埋もれてみえなくなる。

そんなことを空想していたこともあって、創作したものが触れられる「モノ」として現実に残るということが、なんかこう、一周して尊く感じられてしまったのだ。

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デザイナを始めたばかりの若い頃は、コンピュータ上で何でも作り出せることがクールで輝いていて、それを生業とする人間に憧れていた。絵なんか描けなくても、コンピュータを極めたら何でも実現できる、と思った。しかし最近は、所詮それらは「全部コンピュータの中の出来事」なのだと思う。インターネットの世界は無限の可能性を秘めている、などと言われて久しいけれども、その一方で、現実の世界はインターネットの外側に確実に存在し、わたしはその外側で生きている。

無限。無限といえば、宇宙だって無限だ。宇宙は今この瞬間も拡がり続けているという。インターネットを知らない人は世間には沢山いるけれども、宇宙の存在を知らない人はいない。

こう考えると、ウェブ上でちくちくとホームページを組み立てて、更新したりしている自分が、随分と矮小な存在に思えてしまう。「音」がしないか、頭の後ろを気にしながら暮らす日々から離れることができるだろうか。こうして、わたしの気持ちはハガキの上から、真空の暗黒空間へ飛翔する。

あれ。

宇宙のことはとりあえず置いておいて。

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わたしも何か「モノ」をつくろう。

年の瀬にそんなことを思って、絵が描けないわたしが創ろうと考えたのが「折り紙」である。指と紙さえあれば始められる。モノづくりの偉大なる第一歩。

こうした経緯があり、今年の三が日は、自宅でひとり粛々と紙に折り目をつけていたのだった。

紙でペンギンを折りたくなったから折った。
その結果として、年賀状ができ上がった。
それだけである。それがいいのだ。

年賀状ができた

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